認知症ケアの方向性
認知症ケアの原則
1 主体性の尊重、自己決定の尊重
認知症であっても、本人の望む生活が送れるように、様々な場面で、自分自身で決定できるケアを提供する
2 今までの生活を継続していけるようにする
本人が送ってきた人生の歴史を理解し、生活習慣やリズム、環境を出来る限り変えないようにする。
3 自由と安全の保証
自由で安全な生活ができるようにする
4 権利侵害の排除
ケアによって身体、経済、心理面で権利を侵害しないようにする
5 社会的交流とプライバシーの尊重
自宅では孤独にならないように、施設では集団での生活でもプライバシーが尊重されるよう留意する
6 個別的対応
一人一人にあった、必要なケアをする
7 環境の急激な変化を避ける
環境の変化に対応できず混乱することを避ける、一方で、程よい刺激のある快適な環境を整えることも大切である。
8 生きる意志、希望の再発見を可能にするような自立支援
その人の持っている能力をいかし、生き生きと生活できるようなケアを提供する
9 人としての尊厳の保持
認知症がどんなに進行しても、人としてその尊厳を守るケアが必要である。
10 身体的に良好な状態の維持と合併症の予防
身体状態が安定していると精神面でも穏やかに過ごすことができる、自分で体調不良を訴えられない場合や危険を予測しての行動ができない場合も、周囲が配慮する。
認知症ケアの原則は、理念としても常に揺るがないものです。いろいろな場面で迷ったときはこの原則に立ち返って考えてください。介護者が良かれと思ってするケアでも原則に反している時があります。
上の表は2010年における認知症高齢者数の推計である。要支援、要介護認定を受けている『認知症高齢者の日常生活自立度』がⅡa以上の人を認知症とした場合、その人数は28万人となる。
同年に全国6地域で行われた疫学調査の結果では、認知症の日常生活自立度がⅠ、または要介護認定を受けていないが、認知症を患っている人は160万人と推計されている。
そのため認知症の人は合計約440万人となる。
2003年に発表された高齢者介護研究会の報告書では、2010年の認知症の人の推計値は208万人であったが、今回の推計値は2倍以上に増加している。
65歳以上の高齢者における有病率の推定値は15%であり、65歳以上の6・6人に一人が認知症ということになる。
そして団塊の世代の全員が75歳以上になる2025年には、認知症の人は470万人に上ると推計されている。
認知症の前駆状態と考えられる軽度認知症(MCI)である人は380万人(65歳以上の13%)に上る報告がある。
280万人の認知症の人の居場所を下のグラフに示す。2003年における推計と同様に居宅が50%を占めている。
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